- 2007-09-08 (土)
- ART特集
アラーキーこと荒木経惟氏が電通在籍時の25歳のころ、仕事以外の時間でスタジオを使って作品を撮ったりする時間がありました。そのころ影響を受けた映画「裁かるるジャンヌ」からインスピレーションを得て、外人モデルを引き込んで撮ったのがこの作品「ジャンヌ」。当時、アラーキーはスクラップブック4冊構成でこれを作り上げましたが、のちにそれごと行方不明になってしまい幻の作品に・・・。しかしこのスクラップブックの全頁を撮影した複製フィルムが奇跡的に発見されたことにより刊行されたのがこの一冊。なのでこれは写真集というよりは、複製写真集なのですね。荒木氏に撮られ、スクラップブックにまとめられ、それをふたたび荒木氏の腕によって複写される。度重なる撮影と現実の複写によって、「ジャンヌ」はおもしろい存在になっています。
ただ、内容はというとなんてことはなく、「若手がライティングの勉強をした過程を本にしました」というのが全体を通しての感想です。スタジオでの試行錯誤がうかがえる一冊、といった程度。しかしながらこれがアラーキーとなると話が変わってくるもので、この時代の写真家たちは写真集の一冊一冊がその写真人生の転換期であったり集大成として見ることが出来ます。この「ジャンヌ」もその例外ではなく、あのアラーキーがはじめてライティングを試行錯誤しながらストーリー性も含ませつつ作ったという点で、ひとつの転換期になっている一冊と見なすことが出来ます。というわけで写真集としても、評価のできる一冊になると僕は考えています。
Posted by TOMO (keiichi nitta studio)
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